【結論】ゴカイの仲間に近いのはエビやカニではなく、貝の仲間でした。
- 多毛類=環形動物のうちゴカイの仲間
- 読み方はたもうるい
- 決め手はトロコフォア幼生という浮遊期
- ミミズ・ヒルは別グループ(環帯類)
- 体節のないユムシやホシムシも同じ門に
- 放送は8月9日(日)23時30分・Eテレ
- 分類の物差しが変わった理由の予想
- トロコフォア幼生とは何か
- 環形動物に含まれる意外な顔ぶれ
- 磯で名前が分からない理由
- サイエンスZEROの放送日時
ゴカイは細長くて、体に節がある。
だからエビやカニの親戚だろう。
——長いあいだ、そう考えられていました。
いまはその答えがひっくり返っています。
【予想】物差しが「大人の見た目」から「子どもの姿」へ移った
ここからは編集部の予想です。
先に言ってしまうと、ゴカイの仲間の分け方は、大人の姿かたちで判断する時代から、幼生や系統で判断する時代に移ったのではないかと考えています。
予想1:大人の見た目はあとから変わってしまうから。
千葉県立中央博物館分館 海の博物館の資料によると、
環形動物はかつて体に節があるという共通点から
節足動物との類縁が示唆されていました(海の博物館 観察ノート)。
ところが節は
別々の系統で独立に生まれることがある形です。
逆に、いったん獲得したあとで
失われることもあります。
そうであれば、
大人の姿を見比べる方法は
間違いを生みやすい。
そこが揺らいだことが
見直しの出発点だと予想します。
予想2:幼生の形は「消しにくい」から。
いま環形動物が軟体動物に近縁とされる根拠は、
トロコフォア幼生という浮遊する幼生期を
両者が共通して持つことです。
大人になれば
ゴカイと貝はまったく似ていません。
それでも子どものときだけ同じ形を通る。
環境に合わせて大きく変わるのは
たいてい成体のほうで、
発生の初期は変えにくい。
だから幼生の形が
系統の証拠として強く効いたのだと予想します。
予想3:節のない動物まで仲間に入ってしまった。
同資料には、
かつて独立した門とされていたユムシ動物・星口動物・有髭動物が、
いまは環形動物門のなかで
それぞれ特定のゴカイの科に近いと分かってきたとあります。
しかもユムシやホシムシには顕著な体節構造が見られない。
体節がなくてもゴカイの親戚という結論は、
見た目重視の分類では絶対に出てきません。
逆に言えば、
この結果自体が
物差しが変わった証拠だと考えます。
ただし本記事の位置づけは予想であり、
研究の細部を保証するものではありません。
予想4:物差しが変わるほど、専門家の価値は上がる。
見た目で分けられないということは、
図鑑を開いて照合するだけでは
素人がたどり着けないということです。
実際、海の博物館の資料も
ゴカイの仲間は分類が難しく、専門の図鑑もわずかしかないと書いています。
物差しが更新されるたびに、
過去の図鑑の記述は少しずつ古くなる。
その差を埋められるのは
いま研究をしている人だけです。
テレビが分類学者を呼ぶ理由も、
ここにあると予想します。
なお、スイクチムシのなかまのように
いまも位置づけが定まっていないグループもあります。
分類はまだ動いている途中です。
トロコフォア幼生ってなに?
多くの海の動物は、
卵からいきなり親の形にはなりません。
いったんプランクトンとして漂う時期を通ります。
その一形式がトロコフォア幼生です。
環形動物と、
貝類などの軟体動物が共通して持ちます。
この共通点をもとに、
両者は冠輪動物という大きなまとまりのなかで
近縁だと考えられています。
環形動物の顔ぶれを並べてみる
| グループ | メモ |
|---|---|
| 多毛類 | ゴカイ、イソメ、ウロコムシなど |
| 環帯類 | ミミズ、ヒル。体の前方に環帯を持つ |
| ユムシのなかま | 体節が目立たない。旧・ユムシ動物門 |
| ホシムシのなかま | 体節が目立たない。旧・星口動物門 |
| ハオリムシのなかま | 口・肛門・消化管がない。旧・有鬚動物門 |
ハオリムシの仲間には
口も肛門も消化管もないものがいます。
栄養は共生する微生物から得ています。
同じ門のなかに
ここまで違う体のつくりが同居しているわけです。
磯で見つけても名前が分からない
海の博物館の資料は、
ゴカイの仲間について
分類が難しいうえ、専門の図鑑などもわずかしかないと書いています。
磯観察で拾い上げても、
手元の図鑑ではたどり着けないことが多い。
そのうえ分類体系自体が動いていますから、
古い図鑑の記述が
いまと食い違うこともあります。
専門家の出番が減らない理由です。
住んでいる場所は水があればどこでも
資料の言葉では、
磯や干潟、砂浜、寒い海から温かい海、浅い海から深海まで。
種類も個体数も多く、
生態系のなかでも特に重要なメンバーのひとつとされています。
それでも一般の知名度は
釣りエサ止まり。
今回の番組が
「医療・防災・脳」という切り口を掲げているのは、
このギャップを埋めるためだと考えられます。
よくある質問
Q1. 「多毛」とはどういう意味ですか?
体の側面に剛毛と呼ばれる毛が
多く生えていることに由来します。
読み方はたもうるいです。
Q2. ミミズは多毛類ですか?
いいえ。
ミミズやヒルは環帯類という別グループです。
ただし同じ環形動物には含まれます。
Q3. 「多毛綱」という言い方は古いのですか?
資料では旧来の分類体系での位置づけとして
説明されています。
近年は環形動物全体の体系が
大きく見直されている最中です。
Q4. 何種類くらいいますか?
信頼できる一次資料で確認できなかったため、
具体的な数は挙げません。
分類体系が再編中であることも理由です。
Q5. 番組のゲストは誰ですか?
多毛類の分類学者自見直人さんです。
名古屋大学 菅島臨海実験所の講師で、
これまでに70種以上の新種を記載しています。
まとめ
多毛類は環形動物のうちゴカイの仲間。
近い親戚は節足動物ではなく軟体動物で、
決め手はトロコフォア幼生という子どもの姿でした。
体節のないユムシやホシムシまで同じ門に入り、
見た目で分ける時代は終わりつつあります。
放送は8月9日(日)23時30分・Eテレ。
この前提を持って見ると、
分類学者が呼ばれる意味が分かります。

コメント