【結論】星雲賞の受賞は2回だけ。2024年と2025年に見かける名前は「候補」で、受賞ではありません。
- 1回目=2017年・第48回/評論エッセイでの受賞
- 2回目=2021年・第52回/しかもノベライズでの受賞
- 候補は2024年・2025年の2回。合計4回と数えるのは誤り
- 受賞後に「柿村イサナ」名義で創作講座へ通っていた
- 受賞2回の年・回・部門・作品名
- なぜ回数の情報が食い違うのか
- ノベライズで賞を取るとはどういうことか
- 柿村イサナ名義で何をしていたのか
2026年8月11日(火)21時30分、
NHK Eテレ「心おどる あの人の本棚」に
池澤春菜さんが出演します。
調べはじめると、まず引っかかるのが回数です。
「星雲賞作家」と紹介されているのに、
2回だったり4回だったり、書いてあることがそろわない。
そこで公式の結果ページを年ごとにさかのぼって数えました。
【予想】次の星雲賞を取るとしたら、どの部門か
ここからは編集部の予想です。
言い切ってしまうと、3回目があるなら「日本短編部門」で、オリジナル作品での受賞になるとみています。
根拠を8つ並べます。
根拠①:直近2年の候補が、どちらもその方向だから。
2025年の第56回では
「わたしは孤独な星のように」が日本短編部門の候補に入りました(日本SFファングループ連合会議)。
票がすでにその部門に集まっている、ということです。
根拠②:2回目の受賞がノベライズだったから。
2021年の受賞作「オービタル・クリスマス」は
堺三保さんの原作を小説にしたものです。
本人にとっては「自分の話で取ったわけではない」受賞で、
次を狙うならオリジナル、という順番になります。
根拠③:本人の自己評価がそれを示しているから。
2021年の受賞コメントで池澤さんは、
原作・編集・投票者への謝意を書いたうえで
「わたしの功績は3%くらいかと思います」と残しています。
受賞を通過点として扱っている書き方です。
根拠④:オリジナル短編で先に別の賞を取っているから。
表題作「わたしは孤独な星のように」は
第6回ゲンロンSF新人賞・伊藤靖賞を受けています(Hayakawa Books & Magazines)。
実力の裏づけは短編側にあります。
根拠⑤:ノンフィクション部門は競合が強いから。
2024年の第55回で池澤さん監修の
『現代SF小説ガイドブック 可能性の文学』は候補にとどまり、
受賞は『創元SF文庫総解説』でした。
研究・資料性の高い分厚い本が強い部門で、
ここを再び取るのは条件が厳しい。
根拠⑥:星雲賞がファン投票だから。
日本SF大会の参加者が票を入れて決まる賞です。
読み手の記憶に残る短編のほうが票を集めやすく、
実際に池澤さんの名前が挙がったのも短編でした。
根拠⑦:すでに部門を横断して取っているから。
2017年はノンフィクション、2021年は小説。
同じ人が違う部門で票を集めた実績は、
投票する側に「この人の名前は候補に挙げてよい」という
下地ができていることを意味します。
候補入りが2年続いたのも、その延長線上にあるとみています。
根拠⑧:短編集の作り方が票の入りやすい形だから。
『わたしは孤独な星のように』の収録7篇は、
アンソロジー書き下ろし、SFプロトタイピング、講座課題と
発表媒体がばらばらです。
それだけ多くの入口から読まれてきた作品群で、
票が一箇所に偏りにくい。
ただし本人は初短編集の刊行時に
「初だけど、最後かもしれない」と書いています。
次の本が出るかどうか自体が読めません。
以上はあくまで予想であり、
受賞を保証するものではありません。
受賞2回の中身を、年ごとに並べる
| 年(回) | 部門 | 作品 |
|---|---|---|
| 2017年(第48回) | ノンフィクション部門 | 『SFのSは、ステキのS』(早川書房) |
| 2021年(第52回) | 日本短編部門 | 「オービタル・クリスマス」(原作:堺三保/河出書房新社) |
最初の『SFのSは、ステキのS』は
2016年5月24日に出た単行本です。
SFマガジンの連載をまとめたもので、
翌年の第48回でノンフィクション部門を取りました。
2本目の「オービタル・クリスマス」は、
Web河出で2020年12月22日に先行公開され、
『NOVA 2021年夏号』(2021年4月6日)に収録されています。
この作品で2021年の日本短編部門を受賞しました。
回数がずれるのは「候補」を足しているから
星雲賞の結果ページには、
受賞作のあとに参考候補作の一覧が続きます。
ここに池澤さんの本が2回入っているため、
ざっと見ると4回に見えてしまう。
| 年(回) | 作品 | 結果 |
|---|---|---|
| 2024年(第55回) | 『現代SF小説ガイドブック 可能性の文学』(監修) | 候補 |
| 2025年(第56回) | 「わたしは孤独な星のように」 | 候補 |
それぞれの年の実際の受賞は、
2024年ノンフィクション部門が『創元SF文庫総解説』、
2025年日本短編部門が「山手線が転生して加速器になりました。」でした。
候補は受賞ではありません。
「柿村イサナ」は誰なのか
柿村イサナは、池澤春菜さん本人のペンネームです。
2022年、ゲンロン 大森望 SF創作講座を
この名義で受講していました。
講座の公式サイトには課題の記録がそのまま残っています。
第6課題の出題は法月綸太郎さん、
テーマは「何か(誰か)を葬る/弔う/喪に服す物語」。
梗概の締切が2022年9月16日、
実作の締切が2022年10月21日でした(超・SF作家育成サイト)。
ここで書かれた作品が、のちの表題作です。
タイトルはワーズワースの詩
”I Wandered Lonely as a Cloud”からの引用だと
本人が明かしています。
すでに星雲賞を2回取っていた人が、
名前を伏せて課題を出し、講評を受けていた。
そこが一番面白いところだと思います。
初の短編集は全7篇
『わたしは孤独な星のように』は
2024年5月9日に早川書房から出た初短編集です。
装幀は川名潤さん。
収録7篇の由来は本人が明かしています。
- 「糸は赤い、糸は白い」=講座で最初に完成させた作品
- 「祖母の揺籠」=『2084年のSF』への書き下ろし
- 「あるいは脂肪でいっぱいの宇宙」ほか=前後篇のコメディ
- 「いつか土漠に雨の降る」=チリで見た動物が主役
- 表題作=伊藤靖賞を受けた一篇
よくある質問(Q&A)
Q1. 星雲賞は何回受賞していますか?
2回です。2017年の第48回ノンフィクション部門と、2021年の第52回日本短編部門。候補が別に2回あるため4回と書かれることがありますが、受賞は2回です。
Q2. どちらの受賞のほうが珍しいですか?
2021年のほうです。他人の原作を小説化した作品で日本短編部門を取っているためで、発表時には原作者の堺三保さんのコメントも併載されました。
Q3. 柿村イサナ名義の作品は読めますか?
ゲンロンの講座公式サイトに、課題として提出された梗概と実作が柿村イサナ名義のまま公開されています。完成版は短編集『わたしは孤独な星のように』の表題作として読めます。
Q4. 星雲賞はどうやって決まりますか?
日本SF大会の参加者による投票です。運営は日本SFファングループ連合会議。選考委員の合議ではなく、読者側の票で決まる点が特徴です。
Q5. 8月11日の番組は何ですか?
NHK Eテレ「心おどる あの人の本棚」です(2026年8月11日21時30分〜)。本棚を切り口にした番組のため、受賞歴よりも読書歴が中心になる可能性があります。放送内容を事前に確認して書いた記事ではありません。
これからどうなりそうか
候補入りが2年続いているので、
次の作品が出れば3回目は現実的な射程に入ります。
一方で本人は
「書く道に進まなければ良かった、
読んでいる人だけでいれば良かった、と何度も思いました」
とも書いています。
ハイペースで出す書き手ではありません。
放送をきっかけに既刊へ流れる読者は増えるはずで、
まず手に取られるのは受賞作2冊でしょう。
まとめ
星雲賞の受賞は2回。
2017年の第48回ノンフィクション部門と、
2021年の第52回日本短編部門です。
2024年・2025年の名前は候補。
ここを足すと数が合わなくなります。
そして2022年、
受賞済みの書き手が柿村イサナとして講座に通っていた。
賞の回数より、この事実のほうがこの人を説明していると思います。

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