広島の巨大団地で自治会長をやるとどうなる?300人・多言語の回覧板という現場

    【結論】この団地の自治会長が担うのは300人規模のお金・建物・会議、そして多言語の連絡です。

    本記事はプロモーションを含みます。

    • 自治会の区切りはエレベーターという珍しい方式
    • ひとつの自治会で300人前後が暮らす
    • お知らせは日本語だけでは届かない
    • 住民のほぼ半数が高齢者
    • 役職は頼まれて引き受けたもの
    この記事の内容
    • 「コア」という区割りのしくみ
    • 実際にこなしている業務のリスト
    • 自治が回りにくい理由の予想
    • 住民構成を示す2つの数字

    NHK総合「Dearにっぽん」が、広島市中区の巨大団地を取り上げます。
    放送は2026年8月23日(日)朝8時25分から。

    副題に入っているのが「若き自治会長の奮闘記」という言葉です。
    ここで気になるのは、何にそれほど奮闘しているのかという点でしょう。

    この記事では人物ではなく、現場の仕事だけを取り出して見ていきます。

    目次

    【予想】お知らせが最後まで届かない理由

    ここからは編集部の予想です。

    先に答えを出します。
    この団地で連絡が滞るのは、住民のやる気の問題ではなく、ひとつの自治会が抱える人数と多様さが、昔ながらのやり方の限界を超えているからだと予想します。

    そう考える手がかりを5つ挙げます。

    手がかり1:一人止まれば全部止まる方式である

    板井三那子さんは「回覧板ひとつとっても、文化の違いからストップすることがままあって」と述べています(TD)。

    回覧板はバケツリレー式の伝達手段です。
    掲示板のように「見たい人が見る」形ではないため、途中で一箇所詰まれば後半には何も届きません

    手がかり2:受け持つ人数が集落ひとつ分ある

    板井さんの自治会にはおよそ150世帯・300人が暮らしています。
    これは町内会というより、小さな村に近い規模です。

    顔と名前が一致する範囲を明らかに超えています。
    人数が増えるほど「誰が読んでいないか」が見えなくなると予想します。

    手がかり3:5世帯に1世帯以上が海外にルーツを持つ

    2019年の調査では、日本以外にルーツを持つ住民が22.2%を占めていました。
    広島市全体は1.6%ですから、14倍近い密度です。

    日本語の紙一枚では、はじめから届かない層があることになります。

    手がかり4:住民の集まりが言語ごとに分かれている

    団地内のサークルは、日本人が集まる水彩画教室、中国系の刺繍サークル、インド系のアクセサリーサークルというように出自ごとに分かれているといいます。

    自治会は住所で機械的に区切られるのに対し、実際の人間関係は言葉で区切られている
    2種類の地図が重なっていない状態だと考えられます。

    手がかり5:担い手の半数近くが高齢者である

    同じ調査で高齢化率は47.4%。広島市全体の約25%と比べて2倍近い数字です。

    多言語対応をしようにも、その作業を担える人手が細っていることになります。
    板井さんのような若い住民に役職が回るのは自然な流れだと予想します。

    ここまでは公開資料からの予想であり、確定した分析ではありません。

    エレベーターで区切る「コア」という発想

    基町アパートの自治会は、棟でも階でもなく「コア」という単位で分かれています。

    基準になるのはエレベーター
    同じ箱に乗る全フロアの世帯が、そのままひとつの自治会になります。

    担当コア自治会数
    18号棟1〜66
    19号棟7〜115
    20号棟12〜176
    合計17

    横のつながりより縦の動線を優先した区切り方です。
    毎日同じエレベーターで顔を合わせる人同士をまとめる、という合理性があります。

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    実際にこなしている業務

    公表されている範囲で、業務を書き出すと次のようになります。

    区分やること
    お金共益費を各世帯から徴収する
    建物共用部分の修繕を管理する
    会議連合自治会の会議に出席する
    連絡回覧板を多言語で用意して回す

    華やかなイベント運営は入っていません。
    集金・修繕・会議・連絡という、地道な事務が本体です。

    2つの数字が示す難しさ

    住民構成を市全体と比べると、この団地の特殊さがはっきりします。

    指標基町アパート広島市全体
    高齢化率47.4%約25%約2倍
    海外にルーツを持つ住民22.2%1.6%約14倍

    どちらも2019年の調査による数値です。
    この2つが同時に起きている団地は、全国的にも多くありません。

    よくある質問

    Q1. 自治会長はどう選ばれるのですか?

    選出のルールは公表されていません。板井さんは「住民のおじいさんにおしつけられたから」と冗談まじりに説明しています。

    Q2. 何人を受け持っているのですか?

    約150世帯・およそ300人です。団地全体ではなく、17ある自治会のうち1つ分の人数になります。

    Q3. お金はもらえるのですか?

    報酬の有無について公表された情報は見当たりませんでした。一般論として自治会役員は無報酬か少額の手当が多いものの、この団地の実際は確認できていません。

    Q4. 「コアホール」とは何ですか?

    エレベーターホールの呼び名です。基町アパートでは天井高5メートルの吹き抜けになっており、脇にはダストシュートも設けられています。

    Q5. 回覧板は何語ですか?

    日本語・中国語に加え、ヒンディー語やネパール語も併記されているとのことです。住民の入れ替わりに合わせて言語が増えてきました。

    Q6. 住民同士は交流していますか?

    サークル活動はさかんですが、グループごとに分かれているのが実情だと語られています。編み物、水彩画、刺繍、アクセサリーなど内容もさまざまです。

    Q7. 自治会はいくつあるのですか?

    17です。18号棟に6、19号棟に5、20号棟に6という内訳になっています。

    Q8. 若い住民は他にもいるのですか?

    広島市が学生や若年世帯を対象にした入居枠を設けており、住民層の若返りを進めています。板井さんもその枠で入居した一人です。

    Q9. 「わやな町」の「わや」とはどういう意味ですか?

    中国地方などで使われる言い方で、手がつけられない・ぐちゃぐちゃといったニュアンスを持つ言葉です。番組の副題は、この団地の混沌とした状態を住民の言葉で言い表したものと考えられます。否定的な響きだけでなく、親しみを込めて使われる場面もあります。

    Q10. この団地はいつ建てられたのですか?

    高層アパート群が完成したのは1978年です。原爆投下で焼け野原になった広島の中心部に、1960年代から計画されました。川沿いに建ち並んでいた不法住宅や、老朽化した復興木造長屋の建て替え先として構想された経緯があります。設計を率いたのは建築家の大髙正人で、当初は人口15,000人を収容する構想でした。

    これから起きそうなこと

    団地は建て替えの局面に入りました。
    17号棟は基町第21・第22アパートとして建て替えが進み、広島市は中層棟の廃止方針も打ち出しています。

    棟が減れば自治会の線引きそのものが引き直されることになります。
    エレベーター単位で17という形も、いずれ姿を変えると予想します。

    その意味でこの回は、変わる前の最後の記録にあたるのかもしれません。

    まとめ

    基町アパートの自治会長がこなしているのは共益費の徴収・建物の修繕管理・連合自治会会議への出席、そして多言語の連絡です。

    自治会はエレベーター単位のコアで17に分かれ、板井三那子さんはそのうち約150世帯・300人を担当しています。

    高齢化率47.4%、海外にルーツを持つ住民22.2%という土地での自治のかたちが、2026年8月23日(日)朝8時25分から描かれます。

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