【結論】基町アパートは屋上に1,200mの庭を持つ、1978年完成の巨大団地です。
- 屋上の庭は歩くと1キロ以上ある
- 買い物施設の屋根の上が地面になっている
- エレベーターは一階おきにしか止まらない
- お城に近づくほど建物が低くなる
- もともと1万5千人を住まわせる計画だった
- 人工地盤という珍しいしくみ
- 一階おきのエレベーターの狙い
- 設計が優れている理由の予想
- 部屋の2タイプと広さの違い
NHK総合「Dearにっぽん」が広島の団地を映します。
放送は2026年8月23日(日)朝8時25分から。
登場するのは市営基町高層アパート。
建築の世界では有名な建物で、設計したのは大髙正人(おおたか・まさと)という建築家です。
ここでは建物のつくりだけを取り出して、順に見ていきます。
【予想】この団地の設計が優れている点
ここからは編集部の予想です。
先に答えを書きます。
この建物がいまも高く評価されるのは、「人がどう歩くか」から逆算して形が決まっているからだと予想します。
見た目を先に決めた建物ではありません。
そう思う手がかりを5つ並べます。
手がかり1:子どもと車をぶつけない工夫がある
この団地には人工地盤と呼ばれる階層があります。
買い物施設の屋根の上が、そのまま歩くための地面になっているのです。
設計に加わった藤本昌也によれば、子どもの安全のために歩行者と車の通り道を分けることが重視されたといいます(TD)。
上の通路をたどれば、車道に出ずに集会所や学校へ行けます。
手がかり2:どの部屋も日当たりが同じになるよう曲げてある
高層の3棟は、屏風のように「く」の字に折れています。
デザインの遊びではなく、すべての住戸で採光と眺めを平等にするための形です。
公営住宅で全戸の条件を揃えようとした点に、作り手の姿勢が出ていると考えます。
手がかり3:ゴミ捨てのために階下へ降りなくていい
エレベーター脇にはダストシュートが備わっています。
地上まで降りずにゴミを出せる仕組みです。
20階建ての棟もある建物で、毎日の動作をどれだけ短くできるかを考えた跡が見えます。
手がかり4:廊下に物が出ないよう倉庫が用意されている
4戸をひとまとまりとして、共用の倉庫が設けられました。
広さは1戸あたり1㎡、合計4㎡です。
設計者の想定では三輪車・乳母車・漬物桶などを入れる場所でした。
廊下にはみ出しがちな物を先回りして収める、暮らしの実態から出た設計だと言えます。
手がかり5:お城に高さを譲っている
横から眺めると、南に行くほど建物が低くなっています。
隣の広島城と景観を合わせるためです。
天守閣と向き合う部分は8階建て、いちばん遠い場所は20階建て。
自分の建物より街の見え方を優先した判断だと予想します。
以上は公開資料をもとにした予想で、公式の評価ではありません。
数字で見る基町アパート
基本の情報をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | 広島市中区 |
| 高層棟の設計 | 大髙正人 |
| 完成 | 1978年 |
| 想定人口 | 15,000人 |
| 計画戸数 | 4,500戸 |
| 棟の数 | 全20棟(高層は18〜20号棟) |
| 人工地盤 | 中央の広場だけで約3ヘクタール |
| 屋上庭園 | 4,000坪超・全長約1,200m |
当初の計画には住居のほかに、小学校1、幼稚園と保育園が各1、店舗200、医院6、共同浴場3、郵便局や交番まで入っていました。
建物というより町ひとつを作る計画だったわけです。
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上下3つの層でできている
この団地は、高さの方向に3つに分かれています。
| 位置 | 何があるか |
|---|---|
| いちばん下 | 広い駐車場と地下倉庫 |
| まんなか | 基町ショッピングセンター |
| いちばん上 | 人工地盤(緑地帯) |
ショッピングセンターの中央は空へ向かって開いており、階段を上ると人工地盤へつながります。
地下へ降りると、洞窟のような駐車場が広がっています。
一階おきに止まるエレベーターのしくみ
2階より上では、エレベーターは偶数階だけに止まります。
スキップアクセス形式と呼ばれる方式です。
止まる階を減らすことで、共用部分に吹き抜けを作れます。
エレベーターホールはコアホールと呼ばれ、天井の高さは5メートルもあります。
奇数階へは、偶数階の廊下から階段で移動します。
部屋には2つのタイプがあります。
| タイプ | ある階 | 広さ | とくちょう |
|---|---|---|---|
| Aタイプ | 偶数階 | 36㎡ | 共用廊下にじかに面する |
| Bタイプ | 奇数階 | 42㎡ | 階段を使う/両側から光が入る |
階段の上り下りが増える代わりに、Bタイプは広くて風通しがよいという交換になっています。
よくある質問
Q1. 設計したのは誰ですか?
高層棟は大髙正人です。前川國男の事務所で学んだ人で、ル・コルビュジエの孫弟子にあたります。藤本昌也も設計に参加しました。
Q2. なぜここに建てられたのですか?
原爆で焼け野原になった中心部で、川沿いの不法住宅と古くなった復興木造長屋を建て替えるためです。計画は1960年代に始まりました。
Q3. メタボリズムとは何のことですか?
戦後日本で生まれた建築運動で、都市に生き物のような新陳代謝を持たせようとする考え方です。大髙正人はその中心にいた一人でした。
Q4. 屋上には入れますか?
ふだんは一般開放されていません。ときどき開かれる建築見学会で、住民以外が見られる機会があるとされています。
Q5. 屋上からは何が見えますか?
広島の中心部と瀬戸内海が見渡せます。屋上の面を南へ傾けることで、多くの人が海の景色を楽しめるよう意図されました。
Q6. ショッピングセンターには何がありますか?
お好み焼き店やホルモン・焼肉店が並ぶ一方、アジア系の食料品店が増えています。「基町中華街」と紹介されたこともあります。
Q7. 何棟あるのですか?
全部で20棟です。1〜17号棟は高層化より前に建てられた中層のアパート群で、大髙正人が設計したのは18〜20号棟にあたります。
Q8. 近代建築の五原則とはどう関係しますか?
ル・コルビュジエが唱えたピロティ・自由な平面・自由な立面・水平連続窓・屋上庭園のうち、とくに屋上庭園の影響がはっきり表れているとされます。
Q9. 地下には何があるのですか?
広い駐車場と、地下倉庫があります。倉庫のほうには長い年月のあいだにたまった催事の道具・家具・古書・かつての店の看板などが雑然と置かれてきました。半世紀ぶんの暮らしがそのまま積み上がっている場所で、番組でもこの地下倉庫の整理が取り上げられます。
これから起きそうなこと
この建物は更新の時期を迎えました。
17号棟は建て替えが決まり、基町第21・第22アパートとして新しい建物が工事中です。
2026年9月10日〜13日には、団地内のギャラリーUnitéで「基町ののこし方」という展示が開かれる予定です。
すべてを完成させず住む人が手を加える余白を残すという提案が、模型と資料で紹介されます(基町プロジェクト)。
半世紀前の理念を、もう一度やり直そうとしているように見えると予想します。
まとめ
基町アパートは大髙正人の設計で1978年に完成した、広島市中区の市営住宅です。
1万5千人・4,500戸という町ひとつ分の計画から生まれました。
「く」の字の住棟、約3ヘクタールの人工地盤、全長1,200メートルの屋上庭園、一階おきのエレベーター。
どれも住む人の動きから決められた形です。
放送は2026年8月23日(日)朝8時25分から。
初回放送は2025年10月12日で、今回はその再放送になります。

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